サイトスワップにまつわる 2 つの事実の証明を書いてみました。
(以前 NIFTY の FMAGIC に書いたものの転載)

なるべく易しめに具体例を使って書いたつもりです。
が、数学の得意な人には、式を使って書いたほうがわかりやすいのでしょう :-)

わかりにくい箇所や質問などありましたら、お気軽にどうぞ。
(emda@po.jah.ne.jp)

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(*)  サイトスワップで A1, A2,..., An というパターンがジャグリング可能で
     あるための条件は、1+A1, 2+A2, ..., n+An を n で割った余りが異なること
     である。

(**) そのとき、ボールの個数は、( A1 + A2 + A3 + ... + An ) / n である。

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わかりやすくするために、具体的に 4 7 1 というパターンで説明します。

「4+1=5, 7+2=9, 1+3=4 を 3 で割った余り 2,0,1 は異なるから、可能」
というのを示すわけです。

   +--------------------++-++-----
   |  +--++----------+  || ||
   |  |  v|          v  v| v|
4  7  1  4  7  1  4  7  1  4  7  1   ...
|           ^| |  ^|          ^  ^| 
|           || +--++----------+  ||
+-----------++-------------------++--

と進んでいきますが、横一列に並べる代わりに、これを

     1 2 3 (列目)
行   -----------
1  | 4 7 1
2  | 4 7 1
3  | 4 7 1
    ...

と3個ずつ区切って、縦に書きます。

1列目にある「4」が次にどこに行くかというと、4つ先、(次の行の)2列目の
「7」です。
2列目の「7」は、(次の次の行の)3列目の「1」、
3列目の「1」は、(次の行の)1列目の「4」です。
(紙に上の表を書いて、行き先の数字を矢印で結んでみてください)

このように、
  1列目(4) → 2列目(7)
  2列目(7) → 3列目(1)
  3列目(1) → 1列目(4)
となっていて、(ジャグリング可能なパターンならば = ボールがぶつからない
ならば) 列ごとに行き先はすべて違う列になります。

それはなぜか---
   もしも、ある列に違う2つの列から進んできたとします。
                例えば左図のように、
    a    B      A が◎に、B が ○に進むとします。
    a ○ b      すると、B の2つ下の b は、当然◎に進むことになり、
    A    b      これではボールがぶつかるので、ジャグリング可能な
    a ◎ b      ことに反します。
                したがって、行き先はすべて違う列です。

4 7 1 の場合、1列目,2列目,3列目それぞれの行き先の列は、
1+4, 2+7, 3+1 を 3 で割った余りです:
  1+4 = 5 → 2 列目
  2+7 = 9 → 0(3) 列目  (余り0は3列目を表す)
  3+1 = 4 → 1 列目

つまり、列ごとに違う列に進むということは、最初に書いた (*) の条件を
表すわけです。

逆に「列ごとに違う列に進む」ならジャグリング可能であることは、簡単です。
違う列に進むなら、ボールの行き先がぶつかることはないからです。

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[ ボールの個数が (A1+A2+...+An)/n であることの証明 ]

上に書いたように、3 個ずつ縦に並べて、行き先へ矢印を書き込んだ表を考えま
す。1個のボールの軌跡は、矢印を次々につないだものだから、ボールの個数
は、軌跡のスタート地点を数えればわかります。
ここで、スタート地点というのは、「そこに向かう矢印がない地点」だと言え
ます。

表を見てみます。1行目の 4,7,1 が進むところを7,1,4で表しました。

     1  2  3 (列目)    2行目以降の 4,7,1 から伸びる矢印は、その
行   ------------      7,1,4 の下に続きます。ということは、
1  | 4  7  1           「そこに向かう矢印がない地点」というのは、
2  | 4 7 1           7,1,4 よりも上の地点です。
3  | 4  7  1          この場合は、4個(4,7,1,1)なので、ボールは4個
     ...               だとわかります。実際、(4+7+1)/3 = 4 です。

一般にその「4 個」をどう数えるかが問題です。
それには、7,1,4 のそれぞれの上に何個あるかを数えて、合計します。

たとえば 7 は、初めの 4 から数えて 1+4=5 番目の数です。
7 は2列目の数だから、7の上には (5-2)/3 = 1 行、つまり(同じ列の)
7 の上には 1個 あります。
1 は、2+7 = 9 番目の数。3列目の数だから、(9-3)/3 = 2 個
4 は、3+1 = 4 番目の数。1列目の数だから、(4-1)/3 = 1 個

したがって、合計 1+2+1 = 4 個です。

さて、一般化するには、次のように考えます。7,1,4 は、初めから数えて
  1+4, 2+7, 3+1
番目の数で、それぞれから 2,3,1 を引いて 3 で割った合計がボールの個数です。
それは

  (1+4 - 2)/3 + (2+7 - 3)/3 + (3+1 - 1)/3
   o     x       o     x       o     x   

という計算でしたが、o のところに 1,2,3 があって、x のところにも
1,2,3 がある(何列目かを表すから、1,2,3 の順番を変えただけ)ので、結局

  { (1+4) + (2+7) + (3+1) - 2 - 3 - 1 }/3
 = (4 + 7 + 1)/3

という計算になります。これを一般に言うと、

    { (1+A1) + (2+A2) + (3+A3) + ... + (n+An) - 1 - 2 - 3 - ... - n }/n
  = ( A1 + A2 + A3 + ... + An ) / n

となります。